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明治以来の“旧軍国日本”を動かした陸・海軍の元帥・大将たちの
筆のあと等200点以上を紹介しています。

平和記念館目録


大阪新聞(昭和47年4月9日)


旧陸・海将軍の遺墨

集めたり137点  〜埼玉の収集家〜

“書は人をあらわす”と申しますが・・・

取り出しましたるは、明治以来の“旧軍国日本”を動かした陸・海軍の元師・大将たちの筆のあと。ホンモノ、ニセモノ数ある中で、これぞ正真正銘と、埼玉県は蕨市の一コレクターが額に汗して集めたもの。この夏、東京を皮切りに展覧会を開いて回るそうだが
“書は人をあらわす”たとえもあり、四角四面やユーズームゲや、なかなか人柄をしのばせておもしろい。

ユダヤ人が売ってくれ
 集められた書は、明治の元勲・西郷隆盛、山県有朋はじめ、東郷平八郎、乃木希典、大山巌、明石元二郎といった日清・日露戦役の立て役者、それに寺内正毅、田中義一、斉藤実、宇垣一成、岡田啓介、加藤友三郎、林銑十郎、荒木貞夫、杉山元、鈴木貫太郎、松井石根、米内光政、小磯国昭、東条英機、山下奉文、山本五十六…と、戦前の日本を動かした陸・海軍の元師、大将がズラリ。
 あるものは額、あるものは掛け軸、また、あるものは手紙であったりするが、とにかく延べ百数十人に及ぶ将軍たちの大部分がもうらされているというから壮観だ。
 しかも、このすべてが、一個人の収集と聞けばだれもがビックリするに違いない。その主は、埼玉県蕨市中央五ノ一六ノ一五でレコード店を経営する吉野慶一さん(三八)。
 吉野さんは萩市の旧家のセガレで、お父さんが書画骨董のコレクターだったので、小さいころから興味を持っていた。終戦当時、軍隊もののコレクションをはじめ勲章とか鉄兜、軍票、備品などを集めたときに遺墨も入手しそれ以来書を集めるのがやみつきになってしまったという。
 当時は戦争批判、平和・中立の声が高く、過去の軍隊の遺物などはいまわしいものというアンチの風潮だったから、たいへん安く手に入れることができた。将軍たちの遺墨も、当時は三文の値打ちもなかった。
 それを、遺族から譲ってもらったり、生き残りの将軍から直接もらったり、さらに、その紹介で次々とたずね求めるなどしていつの間にか、ぼう大な点数になったのだ。現在、百三十七人分がコレクトされ、残るは二十人ていどだろうということである。
 世相が落ち着いてきて、回顧とか、歴史の再発見などといわれるに従い、吉野さんのコレクションが脚光を浴びてきた。三文の値打ちもなかったものに高い値がつけられるようになった。知人を通じて、ユダヤ人の金持ちが、吉野さんのこのコレクションを買いたいといってきた。もともと手放す意思のない吉野さんは、一億円とふっかけたら驚いて引きさがったそうだ。
 吉野さんは「夫婦で集めているから、私が館長で、家内が副館長」と胸を張り、「苦心して集めたものです、絶対離しません」といっている。
 収集に当たっては、あくまでホンモノだけをという方針で、たとえば、乃木大将の書ならば乃木神社の宮司、東郷元師の場合は東郷神社の宮司に真贋の鑑定をしてもらう。東条元首相のものはお孫さんに当たるなど、慎重にやったので、どれも絶対間違いないと自信満々だ。
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